「霧のむこうのふしぎな町」読書感想文


幼少の頃、「魔女の宅急便」と並んで大好きだったのが、この本です。

霧のむこうのふしぎな町
柏葉幸子「霧のむこうのふしぎな町」

そういえば、3~4年前に偶然しゃべった女の子が、大好きだったこの本を大切にしていたのに、友達に貸したらなくされて手元になくなってしまったと嘆いていました。それくらい、みんなに愛されているお話なんです。

私も「魔女の宅急便」を、大学の友人に「大切だから絶対返して」と念を押して貸したのに、結局返してもらえなくなったので、先の彼女の気持ちが痛いほどよくわかり、その日初対面でもう二度と会うこともない仲なのに、意気投合したことを覚えています。

さて物語の内容はというと、主人公の上杉リナが、夏休みを魔法使いの子孫たちが暮らす霧の谷で過ごす、というもの。“魔法”とか“不思議”って言葉がキーワードになる場合、たいてい場所は外国か無国籍な設定が多いのですが、なんとここでは霧の谷は東北の方の山奥にあるのです! なんてったって、バスがなくて近くまで耕耘機で送ってもらうんですから! しかも、主人公のリナも、かわいらしいワンピースに似つかわしくない、太めでブサイクな小学6年生! 一瞬メルヘンさを減退させてしまうだけのようなこの設定が、最高なんですよ~。だって、お話の中の世界じゃなくて、自分の身近でも起きそうな話に思えるじゃないですか。同じブサイクとして主人公の気分になりきりやすいし(笑)。

霧の谷は、通称“きちがい通り”と呼ばれていて、小鬼や小人やケンタウロス(!)が歩いてるのを目撃することもある不思議な町です。建物はぜんぶで6軒しかなくて、ナータの古本屋、シッカの瀬戸物屋、トケのお菓子屋、マンデーのオモチャ屋、トーマスの船具屋と、リナが宿泊している下宿のピコット屋敷。きちがい通りはどこからでも繋がっていて、必要としている人だけが来れるのです。詩集を必要としている予備校生は、いつもの曲り角をまがったはずなのになぜかナータの店へ着いてしまったり、祖父の形見のランプを探していた船長さんも、いつもの港に行ったはずなのになぜかトーマスの店に着いてしまったり。

普通の人間の子供であるリナがこの町へ来たのは、彼女の祖父がいじわるな(愛すべき)下宿のピコットばあさんと古い知り合いだったから(ピコットばあさんはリナのお祖父さんが好きだったのかしら?)。リナの父親も子供の頃、やはりきちがい通りへ夏休みの間来ていました。気違い通りでは(というよりも、ピコットばあさんの持論では)「働かざるもの食うべからず」というわけで、リナはみんなのお店を順番に回ってお手伝いをします。そのたびに、ひとつ、またひとつと、素敵なエピソードがあるのです。

この本を読むのはほんとに15年ぶりくらいだけど、今読むと当時感じていたよりさらに何倍も感動します。大人になってより細部まで素晴らしさがわかったっていうか。本当に最高! 柏葉さんありがとう! 私も行きたい、きちがい通り!  

あと、この記事を書くにあたってネットで検索して初めて知ったのですが、宮崎駿監督は現在大ヒット中の「千と千尋の神隠し」ではなくて、実は最初「霧のむこうのふしぎな町」で映画を作ろうとしていたそうです。結果的に話は流れてしまったそうですが、「魔女の宅急便」といい、宮崎さん最高だ!  趣味合い過ぎ! 懲りずにまた「霧のむこう~」の映画化を目論んで欲しいです。最高!