「ひさの星」読書感想文


私が文筆業のはしくれとなる原体験となった本です。


斎藤隆介「ひさの星」

小学校の図書室にあったこの本を最初に借りたのは1年生の時。それから借りては返し、借りては返しをくり返していました。今では、地元の図書館で借りては返しをくり返しています。いい加減買えよ!<自分、とは思うのですが(笑)。(追記:買いました)

で、ストーリーはというと—-

主人公のひさは親とすら口をきかない女の子。でも近所の子供が犬に襲われていれば身体をはって助けるようなとても心の優しい子です。ただ、口をきかないがゆえに母親にはいつもあらぬ誤解ばかり受けています。

子供を犬から救った時も、傷だらけのひさを問い詰めて理由を聞きだせなかった母親は「この子はよそで何をしてきてるのかわかったもんじゃない!」と言いました。それでもひさはただ黙っているだけなのです。

村に大雨が降った後で川が増水していたある日、村の子供がびしょ濡れになり「ひさが、ひさが‥‥」と泣きながら家に帰ってきました。その子の両親はひさが自分の子を川に突き落としたのだと思い、早速ひさの家に怒鳴り込みに行きました。ところが、ひさはまだ家に帰って来ていません。ひさの母親は平謝りに謝りました。

しばらくして、泣いていた子供が落ち着きを取り戻しちゃんと話ができるようになりました。

実は、ひさがその子を突き落としたのではなくて、ひさは川で溺れているその子供を助けたはいいものの自分自身が溺れてしまったのです。それを聞いた子供の親はあわてて村の人に連絡し、村びと総出で川を捜索しました。しかし、結局ひさはみつかりませんでした。そして、ひさは空の星になったんだねぇ(つまり死んだっぽい)っつ~悲しいお話です。

私はこれを読んで、当時から漠然と感じていた世の中の理不尽さみたいな物がこの物語りにはすべて書かれている、と思いました。そして「布教しなきゃ!」と思ったのです。

幼少の時から読書好きだったので、大人の人に「ねぇ、本読んで」などと言ったことはなかったのですが、ひとりでも多くの人にこの本を読ませなくちゃいけないと思い、精神的引き蘢り状態だった当時としてはかなり無理して周りの大人に読んでもらいました。でも、誰も感銘を受けた人はいなかったようです。何でこれを読んでなんとも思わないんだろう‥‥。

それ以降、私は以前にも増して活字を信用するようになりました。

言葉ももちろん「口ではなんとでも言える」んだけど、決して「何とでも言えるわけではない」と思います。ただ、会話というのは記録しているものではないので、その時の印象やその人の先入観などによって歪められて記憶されてしまいます。それが、文章にすることによって少しはニュートラルに見てもらえるようになったり、最初は偏見に捕われた目線でしか見れなくても、後にまた読み直した時に違った見え方がする可能性もあると思うのです。

そんなわけで、ヘタの横好き状態で日々駄文製産に励んでいます。“色眼鏡” って、ほんと上手い言葉だと思う。




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